阿部勘酒造

宮城県塩竃市にある「阿部勘酒造」を訪れる機会がありましたので早速ご報告いたします。 今回は「海鮮料理 絆」の親方にご一緒させていただきました。阿部勘さんと親方と私の関係は絆で行われました「蔵元を囲む会 阿部勘編」以来。阿部勘は「於茂多加男山」の名前で先に知り、ずーっと追いかけていたお蔵さんでした。いよいよその心臓部をのぞき見るチャンスの到来です。親方、ありがとうございました(^_^)
「四季の松島」という名前を聞いたことがありますか? おそらく土産物屋さんの地酒コーナには必ずあるはずなのに、仙台の呑んべの多くは試すことすらせずに敬遠していたお酒ではないでしょうか。私は偶然「於茂多加男山」というお酒に出会い、旨いと思って追いかけておりました。するとどうでしょう「四季の松島」だというではないですか(^_^; 今度は逆に四季の松島を試していきました。そして、そろそろ試し終わったと思った頃に新ブランド「阿部勘」が出る(笑)。そのころに「蔵元を囲む会 阿部勘編」があり、今回につながるのでした(以上、前回までのあらすじ)。
阿部勘の名前は私の友人らの間でもあまり聞かない。たまーに聞いても「機械化されたお蔵」と、あまり芳しくない・・。本当はどうなんだろ? というのが今回連れてきていただいた最大の目的でした。だって俺、好きなんだもん(笑)
誤解をおそれず、結果から申しましょう! 「熱い杜氏さんが見せる、日本酒作りの進化の一つがここにあった」と。枯れていない、止まっていない、ずーっと走り続けている杜氏さんが率いているお蔵なのだという良い印象を持ちました。機械化という言葉からすぐさま大量生産を連想してしまったのは間違い。伝統的な南部杜氏の仕事に、伊藤杜氏の長い間の経験、ノウハウ。少人数ながらも地元の人達と造っていく。そのためにも進化をしていかなければならない日本酒の作り方。伝統を守るのも好きですが、こんな方法も絶対アリだと私は思いました。
これらの写真。大きな規模のお蔵さんを想像されると思いますが、おどいたことに、これらはわずか500石のお蔵さんの施設です。洗米機、浸漬機、そして蒸し釜。注目すべきは、麹造りの管理をしている装置「杜氏産」。鳥取県の技術センターと三菱農機との共同開発したものだそう。それをそのまま持ってきたものの、東北の造りに適していないと杜氏自らプログラムを変更、開発元に持ち込むほどなのです。当然全てを装置に任すことはできない、やはり麹蓋など人手が基本。それらが出来ていないと機械を使ってもダメなのだという。全てを勘に頼ることはしない、全てを機械に頼ることもしない。現在、造りは4人でしているとのこと。麹造りは温度と湿度のこまかな管理が必要で経験と勘を必要とする。この人数でやっていけるのもこの装置があればこそだと思う。余計な話ですが、この麹で金賞受賞していると付け加えさせてください。
こっそり大切な物を見せていただきました。山田錦に麹がはせているところです。クリの香りがすると聞いていたのですが・・私には分かりませんでした(^_^;
先ほど蒸していた米が蒸しあがる。人手で運び温度を下げる。現在は酒母造りが始まったばかりなので人力ですが、仕込みが本格化するとベルトコンベア状の放冷機を使うとのこと。青い服は新人さんのようです。ガンバレっ。
酒母のタンクはまだ仕込んだばかり。糖化の段階なのでお酒の匂いもしません(^_^;  仕込みタンクは18機。吟醸クラスのための密閉型と、主にその下のクラスをつくる開放型のものがありました。
搾りはまだまだなので奥まったところに追いやられている「やぶた」と「槽」。出番までにはあと3か月ほどかかる。 BY12の酒が休んでいるタンク。奥のグレーのタンクは冷蔵庫の機能を持つサーマルタンク。
ここで私は初めて炭が入っているのを見ました。お酒のメーカとして一年を通して同じ味を保証するためだとか。こういった裸のままの酒を出しにくい背景もあり、なるべくそのままを楽しんでもらう「阿部勘」という新ブランドを出したのだとか。メーカとしての試行錯誤があるのですね。
昨日刈ってきたという宮城県産山田錦。福島県以北では出来ないと言われていた山田錦が、宮城県で一昨年からつくられ始めています。ここの蔵人さんの実家でつくられているものだとか。質はなかなか良いとのこと。
最後は恒例「分析室」(笑) 早速、分析開始っ! 味の分からない男の分析によれば、全部旨いと判定された(笑)同じ酵母を使い米と造りが違うお酒 5種類。「山田錦40%純米大吟原酒」「蔵の華35%純米大吟原酒」「山田50%吟醸」「山田錦大吟醸」「蔵の華 純米生」。
酵母は宮城酵母。心地よい香りがよいのだとか。でも、うちのはちょっと普通のとは違いますと杜氏さん(^_^)
「お米はやっぱり山田錦だね、米は割れると雑味が出るが、山田は割れずにどうにでもつくれる。しばらくはこれを超える米は出ないと思う」とのこと。でも、値段が高すぎる。宮城県の酒造好適米、蔵の華もよくできているので、それで旨い酒を造っていきたいと嬉しいことを聞きました。
ここで伊藤杜氏さんと、絆の親方と私で話に花が咲く。ここで旨いと感じた原酒。ここで少し飲む分には旨いが、料理に合わせるとダメだという。現在、世の中で売れているのは一発ドカンという個性のあるタイプ。だが、杜氏さんも親方も料理と合わせると旨い食中酒でありたいという。なるほど、そう考えると「四季の松島」はよく狙えている酒質だと思う。
この5種類のお酒、出てきて早々ブラインドテストを行った。お酒のスペックを知らずに好みを言うというもの。そこで私は面白い発見をした(笑) 私が一番旨いとおもったのは「蔵の華 35%純米大吟原酒」、そして好きだと思ったのは「蔵の華 純米生」。共に蔵の華だったのだ(笑)天下の酒造好適米、山田錦を差し置いて、選んだのはなんと蔵の華(笑)これだから、きき酒選手権全問外す俺って楽しいんだね(笑)
感想を奥から順番に。 純米生は12BYの生ということで、このシーズンですからかなり熟していて独特のフレーバを持っていました。通常であればマイナスイメージかもしれないこのお酒ですが、ほら、私好きでしょ、こんなの(笑)山田の吟醸と大吟醸は淡麗旨口。とても綺麗で滑らか、香りも穏やかで、日本料理などと合わせるのにとても良いもの。最後に手前の2本の原酒。滑らかで膨らみが豊かでスッと切れる山田錦。やや荒く後味に微かに雑味を感じる蔵の華。ともに原酒らしい力強さがありました。
私が初めて阿部勘酒造にひかれた「於茂多加男山」について、同席されていた営業の方に伺うとなんと「蔵の華 純米吟醸原酒」とのこと。私がここのお蔵さんで好きだったのは「宮城酵母の穏やかな香り、蔵の華の雑味が混じった旨み、そして原酒からくるどっしり感、コク」 だったようです。長年のなぞが解けました。
# 左の犬は「シェリー」、阿部勘酒造のアイドル犬。杜氏さんも吠えているところを聞いたことがないそうです(笑)
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